労務管理Q&A

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Q1 試用期間中の従業員に対して本採用を拒否することは可能?

A 試用期間とは、企業が社員を本採用する前に、その人の勤務態度や能力、適性などを評価して、正規社員として採用するか否かを決める「テスト期間」のことをいいます。 

この期間の繰上げはできるので、当初の期間満了を待たなければならないということはありませんが、試用期間中の本採用の拒否は、法律上は「解雇」にあたります。

 

そして、従業員を解雇する場合、原則として解雇の予告(30日前の予告か30日分以上の予告手当の支払い)をしなければなりませんが、試用期間中は、採用日から14日以内の解雇であれば解雇の予告はしなくても良いとされています。(労働基準法21条)

また、トラブルを起こさないためには、就業規則に試用期間を設けることやその期間、拒否自由を明確に定めておくことが不可欠です。

Q2 時間外労働を拒否する従業員に時間外労働を強制できるの?

A 法律上、労働時間の基本的なルールとして、「休憩時間を除いて、1日につき8時間、1週間につき週40時間を超えて労働させてはならない」との定めがあります。(労働基準法32条)そのため、これ以上の時間外労働や休日労働をさせるには、まずは就業規則にその旨を定め、その他にいわゆる《36(さぶろく)協定》を労使間で結び、労働基準監督署に提出する必要があります。

 

それに加えて、入社時に交わす労働契約書にも「時間外労働がある」旨を明示し、更にはその時間外労働が正当なもの(業務上の必要性、理由及び当該従業員の私生活の事情にも十分に配慮している)であれば、従業員がそれを拒否することは「業務命令違反」となり、懲戒処分なども可能となります。

Q3 業務上の理由で従業員がメンタルヘルス疾患に罹ったら、会社や上司にも責任はあるの?

A 労働者が精神疾患を罹患したことと使用者との責任については、次のような判例があります。

疲労や心理的負荷が過度に蓄積すると、労働者の心身の健康を損なう危険のあることは、周知のところであり、使用者は業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷の過度の蓄積により、労働者の心身の健康を損なうことのないよう注意する義務を負っている❞(電通事件・最判平12.3.4

つまりは、使用者がこの義務に違反し、労働者が精神疾患に羅患した場合、使用者が損害賠償責任を負うことになります。また、当該の社員が自殺した場合、その上司に対し、過失ないしは管理義務違反行為が認められるといったケースも少なくないようです。

 

結論としては、長時間の時間外労働を恒常的に行わせたり、慣れない業務に就かせた直後などは、特に安全配慮に対して最新の注意が必要と言えます。

Q4 口頭で契約更新を約束していたパート従業員を雇止めにしたら契約違反?

A 「雇止め」とは、労働者と使用者が結んだ、いわゆる有期の雇用契約を、あらかじめ決められた期間の満了とともに契約を終了することです。

もともと有期の雇用契約は期間の定めのあるものなので、原則としては問題がないのですが、反復して何度も更新してきた場合や、同じ業務に就く労働者は更新するのに、一方だけの契約を終了する場合などは、その妥当性が問われることになります。

 

また、平成25年4月1日以降に締結・更新した労働契約に関しては、通算5年(つまり平成30年以降)以上反復して更新された場合、当該契約社員が申し込めば、無期の労働契約に転換することができます。(労働契約法18条)

Q5 部下に達成の難しいノルマを課した場合ってパワハラになるの?

A パワーハラスメント、いわゆるパワハラ被害の特徴は、業務指導などの陰に隠れて、被害がなかなか表面化してこないことです。言い換えると、業務上必要となる正当な指導とパワハラとの線引きが難しいということです。

またパワハラの認定に関しては、「継続性」と「人格否定」が特に重要だと言われますが、その他以下のような基準に基づいて客観的に判断されます。

    暴行・障害

    脅迫・名誉棄損・ひどい暴言

    仲間はずれ・無視

    業務上明らかに不要なことや、遂行不可能なことの強制

    合理性がなく、能力とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや、仕事を与えないこと

    プライベートに過度に介入すること

したがって、標記のような「達成の難しいノルマ」に関しては、部下の教育・指導の範囲を超えると判断されるケースは少ないと言えます。ですが、「そのノルマが未達だった時は賞与の査定に大きく響く」などと言った不利益が認められる場合には、パワハラと認定される余地があると言えます。

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